やさしい窓口障害のある子どもが利用できる制度・手当ガイド
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障害のある子どもの保険

障害のある子どもは一般の保険に加入しにくいのが現状です。 ただし、障害の有無を問わず加入できる保険や共済はいくつか存在します。 また、医療費については公費制度でカバーできる範囲が広いため、 本当に必要な保障を見極めることが重要です。

なぜ一般の保険に入りにくいのか

民間の生命保険や医療保険に加入するときは、健康状態を保険会社に申告する「告知義務」があります。 障害や持病がある場合、告知の内容によって以下のような対応をとられることがあります。

加入を断られる(引受拒否)
保険会社のリスク判定により、加入そのものが認められないケース。知的障害、精神障害、重度の身体障害などで多い。
特定部位の不担保(条件付き引受)
障害に関連する部位や疾病を保障対象から除外した上で加入を認めるケース。保障が限定的になる。
保険料の割増
通常より高い保険料を条件に加入を認めるケース。

補足: 告知で嘘をつくと「告知義務違反」になり、保険金が支払われなかったり、 契約が解除されたりするリスクがあります。正確に告知した上で、加入できる保険を探しましょう。

ぜんち共済

障害のある方を対象とした共済制度で、障害の種別や等級を問わず加入できます。 告知書も不要です。知的障害・発達障害・精神障害・身体障害のいずれでも加入できるため、 一般の保険に入れなかった方の受け皿として広く利用されています。

年額22,000円(月額換算 約1,833円)
加入条件障害のある方(障害種別・等級を問わない。手帳がなくても加入可)
加入年齢満5歳〜満74歳(継続は84歳まで。プランにより異なる)
告知医師の診断書・告知書は不要
入院保障最高日額 10,000円(プランにより異なる)
手術保障手術の種類に応じて 2.5万円・5万円・10万円
死亡保障100万円
個人賠償責任国内1事故あたり 5億円、国外1億円
権利擁護費用弁護士相談費用 最大5万円/年

補足: 個人賠償責任保険が含まれている点が大きな特徴です。 子どもが他人の物を壊したり、他人にケガをさせてしまった場合に備えられます。

全国心身障害児福祉財団の保険

全国心身障害児福祉財団が運営する、心身に障害のある子どもを対象とした団体保険です。 特別支援学校や障害福祉施設を通じた団体加入が中心ですが、個人での加入も可能です。

主な保障内容
入院保障、通院保障、手術保障、死亡保障。プランにより保障額が異なる。
特徴
障害のある方を対象とした制度設計のため、障害を理由に加入を断られることがない。 特別支援学校在学中に加入するケースが多い。

障害者扶養共済制度(心身障害者扶養保険)

保護者が毎月掛金を払い、保護者が亡くなった(または重度障害になった)後に、 障害のある子どもに月額2万円の年金が終身で支給される制度です。 都道府県・政令指定都市が実施する公的な共済制度です。

掛金
月額9,300円〜23,300円(加入時の保護者の年齢により決まる。若いほど安い)。 2口まで加入可能(2口なら支給額は月4万円)。
税制優遇
掛金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象。 受け取る年金は非課税。
注意点
保護者に健康告知が必要。保護者の健康状態によっては加入できないことがある。 加入年齢は保護者が65歳未満、子どもの年齢制限はなし。

補足: この制度の詳細は「親なき後ガイド」で詳しく解説しています。親なき後ガイドを見る

コープ共済・県民共済

コープ共済「たすけあい」
告知項目が4つと少なく、条件次第で障害のある方でも加入できる場合があります。 具体的には「現在、入院中または入院予定がない」「過去1年以内に手術を受けていない」などの項目に該当しなければ加入可能です。 月額1,000円から加入でき、入院日額5,000円の保障が得られます。
県民共済(都民共済等)
健康状態の告知が必要です。告知項目はコープ共済より多く、障害の程度によっては加入が難しい場合があります。 ただし、手帳を持っているだけで一律に加入不可というわけではなく、告知項目に該当しなければ加入できます。 加入できるかどうかは個別に確認が必要です。

保険・共済の比較

名称対象告知費用特徴
ぜんち共済障害のある方全般不要年22,000円障害種別問わず加入可。個人賠償責任 国内5億円を含む
全国心身障害児福祉財団の保険心身障害のある子ども不要プランにより異なる入院・通院の保障。特別支援学校の団体加入が多い
障害者扶養共済制度障害のある方の保護者保護者の健康告知あり月額9,300円〜23,300円(加入時の年齢による)保護者死亡後に子どもに月2万円の年金を終身支給
コープ共済「たすけあい」一般向け(告知項目少なめ)あり(項目が少ない)月額1,000円〜告知項目が4つだけ。条件次第で加入できる場合がある
県民共済一般向けあり月額1,000円〜健康状態の告知が必要。障害の程度によっては加入不可の場合がある

個人賠償責任保険の重要性

障害のある子どもが他人の物を壊してしまったり、他人にケガをさせてしまう可能性は、 障害の特性によってはゼロではありません。 損害賠償は数百万〜数千万円になることもあり、個人賠償責任保険への加入は重要です。

加入方法
単独で加入する方法のほか、自動車保険や火災保険の特約として月額100〜300円程度で付帯できることが多い。 家族全員が補償対象になるプランが一般的。
ぜんち共済に含まれている
ぜんち共済には個人賠償責任保険(国内1事故あたり5億円まで)が含まれているため、 ぜんち共済に加入していれば別途加入する必要はない。
監督義務者の責任
子どもが他人に損害を与えた場合、監督義務者である保護者が損害賠償責任を負うことがある。 個人賠償責任保険はこのリスクに備えるものです。

民間医療保険の必要性は低い

障害のある子どもの医療費は、以下の公費制度で大部分がカバーされます。 そのため、民間の医療保険で入院費や手術費に備える必要性は、一般の方に比べて低いと言えます。

  • 子ども医療費助成(自治体ごと。中学卒業〜18歳まで無料の自治体が多い)
  • 自立支援医療(精神通院医療・育成医療): 自己負担が1割に軽減
  • 重度心身障害者(児)医療費助成: 自己負担がゼロ〜数百円の自治体もある
  • 小児慢性特定疾病医療費助成: 対象疾病なら自己負担が大幅に軽減
  • 高額療養費制度: 月額の自己負担に上限あり

ただし: 入院時の差額ベッド代、付添いの交通費・宿泊費、子ども医療費助成の対象年齢を超えた後の自己負担などは 公費制度ではカバーされません。これらに備えたい場合は、ぜんち共済などの加入を検討する価値があります。

保険選びの判断軸

保険は「何のリスクに備えるか」で選びます。 障害のある子どもがいる家庭で考えるべきリスクと、それぞれの対応策を整理しました。

優先度他人への損害(物を壊す、人にケガをさせる)
対応策: 個人賠償責任保険
数百万〜数千万円の賠償リスクがある。自動車保険や火災保険の特約で加入できることも多い。
優先度親が亡くなった後の生活費
対応策: 障害者扶養共済制度
親亡き後の収入確保として、月2万円(2口なら月4万円)の終身年金は大きい。
優先度入院・手術
対応策: ぜんち共済、全国心身障害児福祉財団の保険
公費医療制度でカバーできる部分が多いが、入院時の差額ベッド代や付添いの交通費などは自己負担。
優先度通院・治療費
対応策: 公費医療制度(自立支援医療、重度医療費助成等)
自己負担がゼロ〜1割になる公費制度が充実しているため、民間医療保険の必要性は低い。

まとめ: 優先順位をつけて選ぶ

障害のある子どもの保険は、まず個人賠償責任保険で他人への損害に備え、 次に障害者扶養共済制度で親亡き後の生活費を確保するのが合理的な優先順位です。 医療費は公費制度で多くがカバーされるため、民間医療保険の優先度は相対的に低くなります。 すべてに加入する必要はなく、家庭の状況とリスクに応じて選んでください。