「親なきあと」に備える — 今からできること
保護者が亡くなった後、あるいは病気や高齢で動けなくなった後、障害のある子どもはどう生活していくのか。 多くの保護者が抱える不安です。
すべてを一度に解決する必要はありません。 今からできることを一つずつ進めていくことで、将来の安心につながります。
このページでは「住まい」「お金の管理」「財産の残し方」「支援ネットワーク」の4つの観点から整理しました。
住まいの選択肢
保護者がいなくなった後の住まいは、お子さんの障害の程度や生活能力によって選択肢が異なります。
グループホーム(共同生活援助)
数人で共同生活を送りながら、世話人や生活支援員のサポートを受けられる住まいです。食事の提供や日常生活の援助があります。障害支援区分に関わらず利用できますが、空きが少ない地域も多いです。
親元を離れる練習として、体験利用(ショートステイ)から始める方法もあります。
入所施設(障害者支援施設)
24時間体制で介護・支援を受けながら生活する施設です。日中は生活介護や就労支援などの活動に参加します。入所には障害支援区分4以上(50歳以上は区分3以上)が必要です。
待機者が多く、入所まで数年かかることもあります。早めに情報収集を始めてください。
一人暮らし(居宅介護を利用)
自分のアパート等で生活しながら、ホームヘルパー(居宅介護)の支援を受ける暮らし方です。自立生活援助というサービスを併用することで、定期的な見守りや相談対応も受けられます。
公営住宅の優先入居制度や、住宅入居等支援事業(居住サポート事業)を活用できる場合があります。
お金の管理を支える制度
障害のある方が自分でお金を管理することが難しい場合、以下の制度を利用できます。
成年後見制度
判断能力が不十分な方に代わって、財産管理や契約手続きを行う人(後見人)を選任する制度です。
- 法定後見
- すでに判断能力が低下している場合に、家庭裁判所が後見人を選任します。後見・保佐・補助の3類型があります。
- 任意後見
- 本人に判断能力があるうちに、将来の後見人をあらかじめ契約で決めておく制度です。
費用: 申立費用: 数千円〜1万円程度。後見人への報酬: 月額2〜6万円程度(家庭裁判所が決定)。
市区町村の「成年後見制度利用支援事業」で、費用を助成してもらえる場合があります。
日常生活自立支援事業
社会福祉協議会が行っている事業で、判断能力に不安がある方の金銭管理や書類の手続きを支援します。成年後見制度ほど大がかりでなく、比較的手軽に利用できます。
費用: 利用料: 1回あたり1,000〜1,500円程度(生活保護世帯は無料)。
お住まいの地域の社会福祉協議会に相談してください。
財産を残す方法
障害のある子にお金を残すとき、一括で渡すと管理が難しい場合があります。 以下の制度を活用することで、安全にお金を届けることができます。
障害者扶養共済制度(しょうがい共済)
保護者が毎月掛金を払い、保護者が亡くなった後(または重度障害になった後)に、障害のある子に毎月年金が支給される制度です。都道府県・政令指定都市が実施しています。
- -1口あたり月額2万円の年金が、障害のある方が亡くなるまで支給される
- -2口まで加入可能(月額最大4万円の年金)
- -掛金は加入時の保護者の年齢で決まる(若いほど安い)
- -掛金は所得控除の対象になる
- -受け取る年金は非課税で、生活保護の収入認定から除外される
生命保険信託
生命保険の保険金を信託銀行等に預け、障害のある子に定期的に届ける仕組みです。一度に大きなお金を渡すのではなく、毎月・毎年など分割して届けることができます。
- -保険金の使い道や届ける頻度をあらかじめ指定できる
- -受取人が金銭管理に不安がある場合に有効
- -信託報酬がかかる
特定贈与信託
特別障害者(重度の障害のある方)に財産を贈与する際、信託銀行を通じて6,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。特別障害者以外の特定障害者の場合は3,000万円まで。
- -信託銀行が財産を管理し、定期的に生活費等を届ける
- -税制上の優遇がある
- -元本保証型の運用が中心
ぜんち共済(少額短期保険)
ぜんち共済は、知的障害・発達障害・ダウン症・てんかんのある方を対象とした少額短期保険です。 一般の保険では加入が難しい方でも、無告知・無選択で加入できます。
- 主な保障内容
- 死亡保障、入院保障、個人賠償責任保険(他人にけがをさせた場合等)
- 保険料
- 月額数百円〜(プランによる)
- 特徴
- 健康状態の告知が不要。障害のある方に特化しているため、障害に起因する入院等も保障対象になります。
少額短期保険は保険期間が1〜2年で、保障額は一般の生命保険より小さくなります。 大きな保障が必要な場合は、障害者扶養共済制度や生命保険信託と組み合わせて検討してください。
支援ネットワーク — 一人で抱えないために
「親なきあと」の備えは、家族だけで考える必要はありません。 同じ立場の保護者や専門家とつながることで、情報も精神的な支えも得られます。
- 親の会
- 全国手をつなぐ育成会連合会、全国重症心身障害児(者)を守る会など、障害種別ごとの当事者団体があります。 地域の親の会に参加すると、制度の使い方や事業所の評判など、実体験に基づく情報が得られます。
- きょうだい児の支援
- 障害のある子の兄弟姉妹(きょうだい児)も、将来の役割や心理的負担を抱えることがあります。 「Sibkoto(シブコト)」などのきょうだい児支援団体があり、きょうだい同士のつながりを持つことができます。
- 相談支援専門員
- お子さんの福祉サービスの計画を作成する相談支援専門員は、「親なきあと」のことも一緒に考えてくれる相談相手です。 住まいやお金のことも含めて、気軽に相談してみてください。
まずやること 3つ
「何から始めたらいいかわからない」という方は、以下の3つから始めてみてください。
ライフプランを書き出す
お子さんの生活に必要なこと(住まい、日中活動、医療、お金)を一覧にまとめましょう。「親がいなくなったら誰がサポートするか」を具体的に書き出すことで、何を準備すべきかが見えてきます。
成年後見制度の情報収集をする
お子さんが将来一人で契約やお金の管理ができるか、今のうちに考えておきましょう。市区町村の成年後見センターや社会福祉協議会に相談すると、制度の説明を聞くことができます。
障害者扶養共済制度を検討する
保護者が元気なうちに加入しておくことで、万が一のとき子どもに年金が届きます。加入年齢が若いほど掛金が安くなるため、早めの検討をおすすめします。お住まいの都道府県・政令指定都市の障害福祉担当窓口で詳しい説明を聞けます。
→ 心身障害者扶養共済制度の詳細を見る