やさしい窓口障害のある子どもが利用できる制度・手当ガイド
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成年後見制度のしくみ

せいねんこうけんせいど

成年後見制度は、判断能力が不十分な方の権利を守るための制度です。知的障害、精神障害、認知症などにより、契約やお金の管理を自分で行うことが難しい方に代わって、後見人が法律行為を行います。障害のある子どもが18歳を過ぎた後の財産管理や契約行為に備えて、しくみを理解しておくことが大切です。

法定後見と任意後見の違い

法定後見

すでに判断能力が低下している方のために、家庭裁判所が後見人を選任する制度です。本人や家族などが家庭裁判所に申立てを行います。

判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があります。障害のある子どもの場合、多くは法定後見を利用します。

任意後見

本人に十分な判断能力があるうちに、将来の後見人をあらかじめ契約で決めておく制度です。公証人役場で任意後見契約を結びます。

将来、判断能力が低下した段階で、任意後見監督人が選任されることにより効力が発生します。本人の意思を反映しやすいというメリットがあります。

法定後見の3類型

法定後見は、本人の判断能力の程度によって3つに分かれます。

後見

対象
判断能力がほとんどない方
具体例
日常的な買い物もひとりではできない。自分の財産を管理・処分することがまったくできない。
後見人等の権限
財産に関するすべての法律行為を代理できる。本人がした法律行為を取り消すことができる(日用品の購入等を除く)。

保佐

対象
判断能力が著しく不十分な方
具体例
日常の買い物はできるが、不動産の売買や借金など重要な判断はひとりではできない。
後見人等の権限
民法で定められた重要な行為(借金、不動産売買、訴訟行為など)について同意権・取消権を持つ。家庭裁判所の審判で代理権を付与することもできる。

補助

対象
判断能力が不十分な方
具体例
ほとんどのことはひとりでできるが、複雑な契約や重要な判断には援助が必要。
後見人等の権限
家庭裁判所が認めた特定の行為について、同意権・取消権・代理権を持つ。本人の申立てまたは同意が必要。

障害のある子どもの保護者が知っておくべきこと

18歳以降の財産管理
子どもが18歳(成年)になると、法律上は親の親権がなくなります。判断能力が不十分な場合でも、親が当然に代理できるわけではありません。預金の引き出し、福祉サービスの契約、不動産の管理などに後見人が必要になる場面があります。
契約行為のリスク
判断能力が不十分なまま契約を結ぶと、不利な契約や悪質商法の被害に遭うリスクがあります。後見人がいれば、不利益な契約を取り消すことができます。
親が元気なうちに検討する
親が急に倒れてから慌てて後見人を探すのではなく、元気なうちに制度を理解し、誰に後見人を頼むか、どの類型が適切かを考えておくことが重要です。

申立ての流れ

法定後見の申立てから後見人選任までの一般的な流れです。

1

申立ての準備

申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、市区町村長などです。必要書類(申立書、診断書、本人の戸籍謄本、財産目録など)を揃えます。診断書は家庭裁判所指定の様式で、かかりつけ医に作成してもらいます。

2

家庭裁判所への申立て

本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書と必要書類を提出します。申立て後は、原則として取り下げることができません。

3

調査・審問・鑑定

家庭裁判所の調査官が本人や申立人に事情を聞きます。必要に応じて、医師による鑑定(判断能力の程度を医学的に判断)が行われます。鑑定が行われる場合、費用は5〜10万円程度です。

4

審判

家庭裁判所が後見人等を選任する審判を行います。申立てから審判まで、通常2〜4か月程度かかります。

5

後見人の職務開始

審判の確定後、後見人が財産目録を作成し、以後の財産管理や身上監護を行います。後見人は家庭裁判所に定期的に報告する義務があります。

費用

申立費用

申立手数料(収入印紙)
800円
登記手数料(収入印紙)
2,600円
郵便切手
3,000〜5,000円程度
診断書の作成費用
数千円〜1万円程度(医療機関による)
鑑定費用(必要な場合)
5〜10万円程度

後見人への報酬(月額の目安)

管理財産が少ない場合
月額2万円程度
管理財産が1,000万円〜5,000万円
月額3〜4万円程度
管理財産が5,000万円超
月額5〜6万円程度

市区町村の「成年後見制度利用支援事業」を利用すると、申立費用や後見人報酬の助成を受けられる場合があります。所得が少ない方や、申立てをする親族がいない方が対象です。お住まいの市区町村の福祉担当窓口に確認してください。

親族後見人と専門職後見人

後見人には親族がなる場合と、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職がなる場合があります。家庭裁判所が本人の状況に応じて選任します。近年は専門職後見人が選任されるケースが増えています。

親族後見人専門職後見人
費用報酬を請求しないケースも多い月額2〜6万円程度の報酬が発生する
専門知識法律・財産管理の知識は限られる場合が多い法律・福祉の専門知識がある
本人との関係生活状況や好みをよく知っている客観的な判断ができる
継続性高齢化や死亡により交代が必要になることがある法人後見なら個人の事情に左右されない
不正のリスク親族間のトラブルが起きるケースがある専門職団体の監督がある

親族後見人と専門職後見人を併用する「複数後見」も可能です。生活面は親族が、法律・財産面は専門職が担当する形が取れます。

日常生活自立支援事業

成年後見制度ほど大がかりでない支援として、「日常生活自立支援事業」があります。後見制度の前段階として利用できる制度です。

実施主体
各地域の社会福祉協議会が運営しています。
対象
判断能力に不安がある方で、この事業の契約内容を理解できる方。成年後見制度の対象となるほど判断能力が低下していない段階で利用できます。
支援内容
  • 福祉サービスの利用手続きの援助
  • 日常的な金銭管理(預金の引き出し、公共料金の支払いなど)
  • 通帳や印鑑など重要書類の預かり
費用
1回あたり1,000〜1,500円程度(地域により異なる)。生活保護世帯は無料です。

判断能力がさらに低下して、この事業の契約内容を理解することも難しくなった場合は、成年後見制度に移行する必要があります。

親なき後への備えとしての位置づけ

成年後見制度は、親なき後の備えの柱の一つですが、これだけですべてをカバーできるわけではありません。以下の制度と組み合わせることで、より安心な備えになります。

遺言

遺言書を作成しておくことで、障害のある子どもに多くの財産を残す、特定の財産を渡す、信頼できる人に遺産の管理を任せるなどの指定ができます。公正証書遺言にしておくと確実です。

信託(特定贈与信託・生命保険信託など)

財産を信託銀行に預け、障害のある子どもに定期的に届ける仕組みです。一括で大きなお金を渡すのではなく、計画的に届けることができます。特別障害者への特定贈与信託は最大6,000万円まで贈与税非課税です。

障害者扶養共済制度

保護者が亡くなった後、障害のある方に月額20,000円(1口あたり)の年金が終身で支給されます。年金は非課税で、生活保護の収入認定からも除外されます。

障害者扶養共済制度のしくみ →

成年後見制度で「誰が支えるか」を決め、遺言・信託・扶養共済で「お金をどう届けるか」を決める。この2つの軸で考えると整理しやすくなります。